実例に見る看護師に迫る過労死の危機

過労死と背中合わせの看護士たち~実例に見る過酷な勤務実体~

2008年にまだ20代という若い看護師が月の残業時間が100時間を超えていたという過酷な労働環境の末亡くなった事件が、公務災害を認めるという裁判所の判決がでました。これで少しは看護師の労働環境が改善されてきてはいるようですが、まだまだ慢性的な看護師不足という実情がある中、多くの問題をはらんでいます。

何故看護師の労働環境がこうも過酷なのでしょうか?看護師不足の中、海外から看護師を招き入れる方策も導入されましたが、日本語能力の問題とそれに関連する看護師資格試験の困難さで、なかなか思うようにはすすまないようです。看護師自身も、タイトな職場の中で自分だけが自身の健康を損ねてまで働きたくないという意識自体を持つ余裕すらなくなっているのではないでしょうか。

先に挙げた亡くなった看護師の勤務する病院も重篤患者が多く、自力歩行も困難な患者のケアは体力も時間も普通より何倍もかかってしまいます。日本の看護師が海外と違って、医師の補佐のような立場からなかなか脱却しないのも要因かもしれません。看護師が医療行為以外に、患者の排泄や入浴など重労働なども担う実態では、肉体的に積み重なる疲労にくわえて一人の患者に関わる時間も自ずから多くなっていくことは当然のことです。本当であれば、もっと分業化して医療行為以外のことを担う人員がいればいいということになります。しかし病院も営利企業なので人件費が重くのしかかります。人件費のコストを削減したら、看護師に大きな比重がかかってしまう。そして不幸な結果を招くことがあるという構図です。

日本の保険制度はとても優れたものではありますが、破綻の危機にあるという側面もあります。保険制度を守るために医療機関の診療報酬が下がってしまっては、こういった問題は悪循環の末、もっと深みにはまることになるでしょう。単に病院内の問題ではなく、社会全体のしくみからのアプローチが必要ではないでしょうか。